[自己啓発/読書] 商いの道〜経営の原点を考える〜(伊藤 雅俊 著)

オススメ度 ★★★★☆


Posted by Ryuichi Yamashita on Nov 5, 2016

イトーヨーカ堂を全国チェーンに押し上げた伊藤雅俊が70代になり、第一線から退いた後に1998年に出版した本ですが、そもそもイトーヨーカ堂の創業者が伊藤さんという方だったということも知らなかったので、たまにイトーヨーカ堂で買い物をする私としてはその設立当初の経緯なども知ることができ、内容そのものが新鮮でした。

商いの道〜経営の原点を考える〜

オススメ度:★★★★☆

もともとイトーヨーカ堂の原点は伊藤雅俊のお兄さんがこじんまりと経営をされていた洋華堂という卸売店が原点だったのですが、喘息持ちのお兄さんが40代で急死されてから著者の伊藤雅俊がその後を引き継ぎ、そこからイトーヨーカ堂を全国チェーンに育てあげることとなります。しかしながら彼がお兄さん、お母さんから学んだ多くの経験が著者の商いの原点として深く刻み込まれており、幼少期から洋華堂を引き継ぐまでのエピソードはその時代背景も想像しながら読むならば、素直に感情移入してしまうほどひき込まれるものがあります。 「安易な道を辿らないこと」や「誠実を貫くこと」といった至極当たり前の経営指南はともすれば非常にありきたりな内容になってしまうものですが、その裏側に隠された数々のエピソードを知ると、その当たり前な行動そのものがいかに難しく、それゆえに重要なことなのかという事実に気付かされます。

非常に興味深かったのは、平成の激動の時代にあっては、「生活を提案する商い」をしなければならず、「社会や時代が変化すれば、当然商いも変わる」ということを意識しなければならないと本書で著者が述べている点です。読者の方は「いや、それは当たり前なことだろう」と思われるかもしれませんが、伊藤雅俊が今やコンビニ業界の雄であるセブンイレブンの創業者であるといいうこと、そしてこのように述べている時の年齢が70代のお爺さんだったということには驚きの念を抱かざるをえません。

少し前に、LINE社の田端信太郎氏がとある会合でアンケートをとった際に、ポケモンGOで遊んだことがない経営者が多すぎたという事実から日本企業のデジタル化の遅れを非難されていましたが、非常に通じるものがあると思います。

消費者の心をまさに今掴んで離さないものを見つけ、新しいライフスタイルを提案していく商売をいかに実践できるか、難しくも商売人として持っていて当たり前である意識をしっかり持ち続けることが重要と思います。