友人との待ち合わせ時間に余裕があり、TSUTAYAの中古コーナーをブラブラしていた時に見つけました。森川さんがLINE社の社長だったことは知っていたのですが、LINE社を退任されたことは本書を読んで初めて知りました。本書の中で成功体験を捨て続けることの大切さを説いておられますが、LINEをここまで大きなサービスにされた立役者ながらその成功に縛られず、この度あえて起業されたと知り、まさに有言実行の人だと感じました。

オススメ度:★★★★☆
本書は森川さんのビジネス上の考えが散文形式のように多く語られています。そのどれもが実績に基づいて書かれているため説得力はやはり違うものがあります。「会社は人が全て」や「熱こそが成功の条件である」といった、いわゆるありきたりな内容も書かれていますが、思わず目からウロコのような内容も書かれており、新鮮でした。
例えば、「経営は管理ではない」や「ビジョンはいらない」など、ビジネススクール出の経営コンサルタントたちの仕事が無くなるような過激なことも書かれています。Business Administration学部の学部長に是非読んで欲しい内容ですね(笑)。
インターネットのスタートアップに片足を突っ込んでいる人間として、私も共感できることが多々あり、最近は事業計画をタラタラ考えている暇があるなら、とりあえずモックアップ(プロトタイプ)を作ってみて、それをリリースして、ユーザーの反応を見た方が良いと思うようになりました。そもそも未来を読むことは不可能で、特にIT分野はその傾向が強く、計画通りに行くことなど不可能に近いです。もちろん、計画を立てることの重要性は否定しませんが、頭で枠組みを大まかに想像するか、紙一枚に自分の考えをまとめる程度のレベル感でいいと考えています。(投資家など社外に説明する場合は別ですよ。。。)
多くの大企業のイケていないところは本来サービス開発や社外向け説明にかけるべき時間とコストを社内力学の調整に使ってしまっている点です。例えば、以前私が勤めていた大企業では一つサービスのローンチをするにしても企画書を何百枚を書くのが仕事の大半で、実際のサービス開発は他社に丸投げ、自分たちは管理するのが仕事というスタンスの人たちが圧倒的多数だったのですが、まさにここに問題があると思います。
サービスがローンチせず、ユーザーが一人もいない状況は付加価値ゼロなんです。だから意味がないんです。だから、たった一人でもいいのでユーザーを見つけ、そのユーザーの役に立つこと、感動させること、それを地道に続けていくことが重要なんです。本書はそのような初心を思い出させてくれる良書でした。機会があれば読んでみてください。